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最高裁判所第一小法廷 昭和26年(あ)1986号 判決 1954年1月14日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人渋谷又二の上告趣意第一点、同鍛冶利一の上告趣意第二点について。

所論は、違憲をいう点もあるが、要するに、原判決の外国人登録令三条の解釈、適用を非難する単なる法令違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、苟しくも、外国人が、連合国最高司令官の承認を受けないで、本邦に入った以上、居住権の有無にかかわらず、同令三条に違反し同令一二条一号に該当するものであるから、原判決の判断は、無用の説明をしただけで、その結論は正当である。

弁護人渋谷又二の上告趣意第二点について。

所論は、原判決の是認した第一審判決の認定に副わない事実関係(第一審判決は、被告人自身の密入国の犯罪事実と貨物を船舶に積載して日本領域内に輸送した別個独立の犯罪事実とを認定している。なお、本件差戻控訴判決理由参照。)を前提とする法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

弁護人鍛冶利一の上告趣意第一点について。

所論は、憲法三九条後段違反をいうが、本件差戻控訴判決は、所論訴因追加請求については、「公訴事実の同一性を欠くから、訴因追加として許されないもので、実質的には追起訴たる性質を有するが、公訴提起に関する法定手続を履践した形跡がないから適法な追起訴ともいえない」趣旨の判断をして差戻前の第一審判決を破棄しており、そして、差戻後の第一審手続は、この差戻判決の破棄理由に拘束されるものであるから、所論昭和二五年八月二一日の公訴は、最初の起訴であって、二重の起訴とはいえない。されば、所論違憲の主張は、その前提を欠き、刑訴四〇五条の上告理由として採用できない。

同第三点について。

所論は、違憲をいう点もあるが、単なる訴訟法違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、原判決は、職権で法令違反を理由として第一審判決を破棄し自ら量刑処断したものであるから、訴訟法違反も認められない。(なお昭和二六年一月一九日当裁判所判決判例集五巻一号四二頁以下、同二六年二月二二日当法廷決定判例集五巻三号四二九頁以下参照)。

よって、同四一四条、三八六条一項三号に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔)

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